闇落ちした夏油傑の心の変化を辿ってみた。(前編)

呪術廻戦
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こんにちは、jinbocchiです。

前回、『呪術廻戦』における五条悟と夏油傑の2人の関係性を、作中における五条悟の一人称描写を中心に考えていきました。

今回も五条悟と夏油傑の関係性について、考えていきたいと思います。特に、夏油傑側の視点と心理を中心に


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“二人の最強”だった学生時代

単行本14巻刊行時点では、夏油傑が時系列的に一番最初に出てくるのは、呪術高専の学生時代です。作中の本編では2018年で、その12年前の2006年が、五条悟と夏油傑の”二人の最強”の過去編の舞台。

この学生時代の様子から、いくつかの夏油傑像を考えていきます。




まずは、特徴的な服装から。夏油はめっちゃボンタンです。

呪術高専の制服はちょっと変形した学ランベースの高校生の制服ですが、第4話で五条が「希望があれば色々いじって貰える」とも言っている通りで、ある程度の夏油の好みが反映していると思います。

って思うと、変形学生服のイメージ的には、ちょっと不良っぽい感じでしょうか。応援団なんかもありますね。普通の中学生、高校生くらいの頃の描写がないため何とも言えませんが。


あとは、下半身の可動域が大分広がるため、動きやすさを優先するっていうのも無くはないですがね。68話の呪詛師の爺さんとは近接戦闘をバチっとこなしてますし、普段は呪霊操術で目立たないだけで結構な武闘派なのかもしれません。過去編の沖縄での体の描き方や、思い悩みながらのシャワーシーンの描写を見る限り、結構な筋肉質っぽいし。


こういった雰囲気からも、また、過去編冒頭のところでの廬歌姫、家入硝子の掛け合いで「あの2人みたいになっちゃ駄目よ」「なりませんよ、あんなクズ共」と言われているあたり、やっぱりクセのある、案外武闘派な、不良っぽいキャラクターと思っていいかと。




そして、彼は思想的に「弱者生存」「弱気を助け強機を挫く」を基本にしていて、「呪術は非術師を守るためにある」と五条に語ります。この「弱気を助け強機を挫く」というのは、歌舞伎由来の言葉だそうで、勧善懲悪という言うなれば漫画やドラマのベタなやつですね。まさしく、五条のいう通りの正論です。けど夏油地震は、この正論を大切にしていました。

大分先ですが、76話では、強者と書いて「じゅつし」のルビをふっているモノローグもありますしね。


この辺りを考えても、夏油傑というのは任侠、漢気みたいな考え方を内に秘めている感じが読み取れます。番長、みたいな。そのために、彼は最強という力の誇示への思いが強かったのだと思います。



当時の呪術高専において不遜な五条と夏油。そんな彼らは「喧嘩するほど仲がいい」みたいなのがバッチリで、ことあるごとに口論になるんですが、その分、対等でした

その部分が強く意識された描写は、五条の「、最強だし」が分かりやすいですね。

呪術廻戦 66話より






あとは、沖縄にいるときの2人のこういった様子も示唆的です。

呪術廻戦 70話より




そして「もしかしたら天元様と戦うことになるかもしれないよ」という会話をする2人の様子が、若さたる不遜な態度がよく分かりつつ、ここでも「は最強なんだ

呪術廻戦 72話より

しかし、この後に繰り広げられる伏黒甚爾との戦いののち、五条悟は最強と成ったために徐々に2人の関係性に変化が生じていきます。


“一人の最強”と、モノローグの増える夏油

五条悟が最強に成ったために、”二人の最強”から”一人の最強”になってしまった。今までの関係性が変わってしまい、最強の五条は一人でも任務をこなすようになり、うつむきが増える夏油。それと同時にモノローグ(一人語り)が増えます。

それまでは、基本的にモノローグがなくて考えていることは口に出して、対等に五条と会話していたんです、ずっと。

ここのやりとりなんかは、話しかけられてちょっとハッとなっている夏油が描かれていて(それでも視線は向けない)、これまで二人で会話をしていたであろう雰囲気に、まだのっかってる五条との差異が出てますよね。

呪術廻戦 76話より



その次のコマでは気の無い返事をする夏油。ここでも視線を五条に向けるわけでもなく、うつむいたまま。

呪術廻戦 76話より





ここが今までの二人の会話には全然現れなかった描写なんですね。しかも、五条がかける「ソーメン食い過ぎた?」が太字になっている辺り、どこか雑な会話になっていて、ここで夏油の本心というか変化に気付ければ何か変わったのかもしれない。

こうやってモノローグが増えるというのは、話し相手がいなくなったって事実が大きくて、その分、考え事ができるような暇な時間が増えたんだと思います。ただ、対等な相手と口論をしている時は二人の考え方がぶつかり合っても結果として”そういう考え方もある”と認識できていたんでしょうけど、あくまでもモノローグが増えると、自分自身の内側の悩みが膨れ上がるだけ。


途中の呪霊を取り込む時の味の話も、そう。今までは非術師を救うのが当たり前の正論の中で生きていた夏油にとって、そこが揺らぎ始めてしまったからこそ、のモノローグ。

その後に灰原との会話で五条へのお土産のくだりがあったり、九十九由基との会話でも「悟には私から言っておきます」など、この辺で五条への思いをこじらせている感じでは、まだないと思います。ただ、自分自身の”あるべき姿”については悩みまくっているんでしょうね。

自分の内面に向き合って、ブレている自身の価値観。そこに九十九の話が入り、ふと生まれてしまった疑念。





そして、灰原の死。個人的には、この時の七海とのやりとりが引き金だったんじゃないかなぁと、強く思います。

呪術廻戦 77話より

これ、1年前までだったら「もう五条さんと夏油さんだけで良くないですか?」だったと思うんですよね。

これが如実に夏油の立場が変わったことを示唆していて、最強の五条だから出来ることがあり、他の術師にしてみれば「マラソンゲーム」。長期戦であり、いつまで続くのかわからない感じもあり、結論がどうなるのかも想像ができない。

ただ、仲間が死が積まれていくのだとしたらどうなんだろうか。最強の五条ならば、死者も出さないのかもしれないが、と。




そして彼は、自身の理想を求める道を歩むことを決めた。それが呪詛師だとしても、彼は本音を選んだ。



この後の夏油傑の物語は、本編の前日譚である0巻で描かれます。いろんな悩みの中で生きてきた彼が、どんな結末を辿るのか。それは長くなったので後篇として、次回まとめたいと思います。理想に生きたい夏油と、それでも手放せなかった友人への想い、情けないような人間味も含めて。












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