五条悟と夏油傑の関係性と、五条悟の人称の変化による心理描写

呪術廻戦
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こんにちは、jinbocchiです。

今回は、『呪術廻戦』における五条悟と夏油傑の2人の関係性を、作中における五条悟の描写を見ながら考えていきます。

『呪術廻戦』における五条悟と夏油傑の2人の関係は、物語における一つの重要なファクターとして描かれていました。第65話から第79話の途中までで、2人の過去編が「懐玉(11話)」「玉折(3話)」と14話に渡って、最後の79話は5ページほど描かれています。

この五条・夏油の過去編を踏まえて、作中における五条悟の人称変化を追いながら、五条悟の心理描写をたどっていきましょう。

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五条悟の一人称は「僕」

物語序盤から颯爽と登場している五条悟。彼は『呪術廻戦』における最強の呪術師として、堂々と第2話から宣言していて、それを証明するかのごとく、出てくる呪術師、特級呪霊のみなさんが対峙したり噂にしたりと、この五条悟と言う最強キャラを印象付けてくるんですね。

ほかの漫画でいう奥義みたいな雰囲気の「領域展開」なんかも2巻で早々に披露しちゃうってくらいの堂々とした最強っぷり。

そんな強さとうらはらに、飄々としたキャラクターをも前面に出してきた彼の一人称は「僕」。これが、どこか彼の強さを格上げしている感じが強いんですよね。

マイペースで、特級呪霊が出ても動じず。自他共に最強と認める彼が、あまり上からっぽい雰囲気に聞こえない一人称を使うのは、どこかに余裕があるというか。

そんな彼の一人称が「僕」なのは、やや昂ぶっている時でさえも変わりません。この辺は、作品の中で貫かれていますね。

呪術廻戦 84話より

かつては「俺」が、夏油に指摘される

そんな五条は、先に挙げた2人の過去編においては、現代とはキャラクターが違っていて、一人称が「俺」でした。見た目は置いといたといて、性格や雰囲気は明らかに別人。不遜な態度の最強術師。

この過去編は、そんな五条の大きな変化の物語だったのですが、それはまた別の機会にまとめようと思います。




過去編の中で、夏油から、「一人称「俺」はやめた方がいい」と忠告をされます。

呪術廻戦 66話より

この時点では、五条は特に意に介さず、という感じでした。

しかし、この後に本編でも語られるように2人は決裂。その決裂で五条は自身だけが最強ではダメだと悟り、少しずつ変わっていく様子が描かれます。


五条は夏油との決裂を経て、今まで見えていなかった”何か”を感じ取ったように思います。1つは、後輩や自分より下の人たちが育つような環境を作ったり働きかけをすること。自分が強くても、他人(=五条)に救われる準備がある奴しか救えないって思ったように、夏油のように自分の足で一生懸命強くなろうともがいていたものを、「五条の強さだけでは救えない」ってことが如実にわかってしまったんですね。


呪術廻戦 78話より

過去編最後のカットでは、五条が一人称を「僕」に変えます。ここでは伏黒という次の世代の呪術師と出会いに行く場面なんですけど、これはさっきの夏油との決裂を経て得た見地。本編の五条に比べると、まだまだ過去編のトゲトゲしい感じが残っていますが、明確に一人称が変わった瞬間ですね。

この一人称が「僕」になった理由は、さっき挙げた夏油からの忠告からだと思います。後やりとりの次のページで、夏油には「歳下にも怖がられにくい」と言われていますから、まさにこれが五条にとって大きなアドバイスになっているのかもしれません。

ただ、この過去編最後は「強くなってよ 僕においていかれないくらい」というセリフがあるように、新しい自分との向き合いと同時に、夏油へのトラウマのようなものがへばりついてる感じのまま、過去編は終わります。







そんなことから、本編において五条の一人称が「僕」というのは、歳下に怖がられにくいようなキャラクターを出せるため、というのが分かります。あえてやってきているキャラクター作りということですね。

呪術廻戦 79話より

冒頭から描かれている五条の振る舞いは、過去編を通じて形成された青年・五条悟の基盤となっていると言えるでしょう。





これと同時に、もう1つ、五条が敢えて作っているキャラクター設定を感じます。

「僕最強だから」の戒め

作中で、五条の一人称とはそれますが、同時によく言葉にして出てくる「最強」というフレーズ。五条が初登場した第2話で、早速出てきます。

これも、夏油との決裂から「最強である」ということが、解決になるとは限らないという教訓から感じ取っている部分かもしれません。

というのも、五条は誰がどう言おうが、最強術師の1人であり、そこからは抗えないんですね。


だからこそ、五条が生き方を変えたり、考え方を変えたところで、夏油と決裂するに至った1つの原因である「最強」という存在感は強い光であり、同時に強い影として表裏一体であり続ける。そういう呪縛の中で、五条が「僕最強だから」という風に言うのは、戒めのようにも聞こえるんですね。




10巻の巻末には「アナタにとって五条悟とは?」というタイトルでおまけ漫画がついてます。このタイトルに沿って登場人物数名が、五条悟がどんな人間かを答えていくのですが、ここも中々に面白い描写です。

虎杖、伏黒、野薔薇、釘崎、真希・パンダ・狗巻の2年生ズ、七海、東堂の全員が、口を揃えて「(五条悟は)最強」と答えるんですね。作中の彼らの様子からは特に疑問のないカットなんですけど、わざわざ分かりきったことであるこの情報を、敢えてここで描いた理由はなんなんだろうと思いました。



呪術廻戦 10巻より

んで、このカットが挟まった後に11巻に入った際に、五条は作中では初めて偽夏油と対峙します。つまり、この10巻の最後のおまけ漫画は、五条と夏油の再会?に際して意図的に入れたんじゃないなかって描写でした。

そう思って見てみると、みんなが何だかんだ言っても「(でも)最強」と答えているのとは対照的に、五条悟自身は「最強」と言われるのと同時に影がしっかり描かれているんですよね。この辺りが、五条悟自身にっての最強への特別な思いを表している感じです。今でも彼は、自分が最強であることには、複雑な気持ちを抱いているんでしょうね。




本人曰く「後進を育てるため」という設定メモみたいなものも描かれていましたが、この言い回しもどこか含んでいる感じですよね。

呪術廻戦 1巻より

・後進を育てるために自分ではやらずに託している

みたいに書いてあるわけじゃなくて

本人曰く「後進を育てるため」

って描かれているあたりが、何ともそれっぽい。五条的には、自分なりに努力をして先生を演じているのかもしれません。そうは言っても明確に最強である事実が、常につきまとっているんでしょうね。



偽夏油との対峙に出たかつての自分、本当の自分

そんな五条が、90話で偽夏油と初めての対峙をした際に、一人称「俺」が口に出てきます。

呪術廻戦 90話より

目の前に現れた、かつて自分の手で殺したはずの親友。その姿に戸惑い、六眼で感じ取る全ての情報は目の前のそいつを夏油と認識しているのに。明らかにおかしな状況に、五条は混乱をしながらも、かつての彼に戻ります。

その直後、偽夏油と認識をした後には、五条の一人称が「僕」に戻っています。まるで、夏油と、偽夏油が並んで立っていて、その2人に交互に話しかけているかのように。

呪術廻戦 90話より

この数回のやりとりで、一人称が「俺」に戻ったのは1度だけ。この辺り、五条が一人称「俺」で呼ぶ自分自身の様子が、ある意味では彼の本当の人間性に近いかなぁと思います。

作中では「僕」と読んでいる五条も長らく描かれていますが、こちらは言うなれば大人の五条。最強を背負って、親友を殺した十字架を背負って、それを踏まえて次世代に向けて日々歩む、そんな五条の姿なのかもしれません。

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